マタニティマーク

サラリーマンのパパは地下鉄の始発駅で整列乗車し、優先席ではない普通の席に座って本を読みながら通勤している。
先日、目の前にある女性が吊り革につかまって立った。年齢が微妙で、ウールのコートを着たお腹が微妙にポッチャリした女性で、文庫本を微妙な感じで読んでいるのだ。
もしかして妊婦さん?と一瞬思ったが、マタニティマークはコートにもバッグにも付いていない。間違って席を譲ったら、往復ビンタがくるとも限らない。不機嫌な朝にはなおさらだ。
しばらくすると向い側の席が空き、その女性は座ることができたので事なきを得たが、妊婦かどうかの真相は闇に包まれたままになった。
思えば、ママは妊娠中に「マタニティマーク」をバッグに取り付けていた。


matamark.jpgしかし、そのマークで席を譲ってもらったのは、たった1回だけだ。優先席に座っていた女子高校生が、バッグに付けたマタニティマークに気付いてくれたのだ。
ママ曰く。優先席に座っているのは老人やケガをした人ではなく、中年や若者だ。中年の代表は疲れたサラリーマンやオバサンで、大抵は目を閉じて気付かないふりをしているか寝ている。若者も意外に多く、そのほとんどは携帯メールをやっている。これでは誰もマタニティマークに気が付くはずがない。
一方、席を譲ってくれる人は、ベビーカーで乗り込んだ子ども連れのママやちょっと気弱でいかにも優しそうな男子学生…といった感じだという。
特に席を譲ってほしいのは、妊娠初期と後期だ。初期はお腹こそ目立たないが無理をすると流産する可能性のある危険な時期だし、次第にツワリの症状も出てくる。妊娠後期はベビーと羊水で数キロにもなる。2リットルのペットボトル2本をお腹に巻いて立っているのは明らかに辛いだろう。
現在「マタニティマーク」のPRは、一部の駅貼りポスター程度に留まり、認知度はきわめて低い。優先席でのピクトグラムだけでなく、ズバリその場での告知等が必要だ。また、教育現場での取り組みや社会に向けてのさらなる啓蒙も必要だろう。
しかし元来日本人には、譲り合いの精神や社会的弱者をいたわる気持ちがある国民だと信じたい。