珍しく残業で少し帰りが遅くなった。そのおかげで、もあちゃんとお風呂で一緒になった。
もあちゃんは、スポンジでバスタブの縁や鏡などを上手に掃除しながら、つぶやいた。
『しんぱいしたら、なにもしない!』
神のお告げのような言い切り方に圧倒されて、パパは思わず『ハイ!』と答えてしまったが、日本語としてはちょっとおかしいので、『それ、どういう意味ですか?』と恐る恐る尋ねてみた。すると、
『しんぱいしたら、なにもしない!』
と同じお告げが返ってきた。思わず『ハハ~!』となり、湯船で少し身体が沈んだ。
きっと、パパが残業で疲れた顔をして湯船に浸かったのを見かねて、『心配し過ぎるは良くない。何もしないくらいの気持ちで気楽にやらなきゃだめだ。』と言いたかったのだ。だとすれば、パパが心配性であることを、2歳児に見抜かれてしまったことになる。