ちょっと変わった幼児の写真集『未来ちゃん』が売れている。アート系写真集としては異例の5万部を発行し、売れ行きは衰えない(日経MJ、2011.6/12)らしい。
このタイトルの読み方は、「みきちゃん」でも「みくちゃん」でもなく「みらいちゃん」だ。『未来ちゃん』は作品のコンセプトで、被写体の本名は佐渡島に住むつばさちゃん。撮影は写真家川島小鳥(かわしまことり)氏によるものだ。
すでに書店で見て知っている人もいるかもしれないが、未来ちゃんは、カメラを無視して自分のことだけに集中し、ものすごい形相でご飯を食べ、鼻水まみれで驚き、昭和レトロな田舎で縦横無尽にたくましく生きている幼児だ。写真は2歳半から3歳に成長する約1年間を記録したもので、まさに今のもあちゃんの年齢とかぶる。
いくつか写真を見ていくと、未来ちゃんは、眉毛が太く瞳も黒く眼力(めぢから)がある。自分自身への集中力も高い。携帯電話やデジカメなどにも触れることはなく、人工的なものにはほとんど興味はなさそうだ。これは、iPadを操るもあちゃんとは対極にある。
写真集『未来ちゃん』は、見たら忘れない小島氏のカメラワークに加え、今となっては忘れかけている人間本来の“生命力”を写真に切り取っている。まさに、未来ちゃんのような骨太の生き方を、未来永劫忘れてはいけないということを訴えているのではないかと思う。